HEAVEN'S DOOR

 008---------
「じゃあ、私がいくつか好きなものを選びますから、その中から友雅さんがひとつだけ選んで下さい」
あかねの手が、友雅の両頬に触れる。
顔をぐっと近付けて、瞳と瞳しか交わらないくらいの距離まで。
「二人で選びましょう?二人のためのドレスですもん」
「私に頼むと、また長引くよ?」
「ダメです。ずっと前からの約束でしょう?友雅さんが似合うって思うものじゃないと、私着たくありません」
任せておけ、って言ったもの。
一番綺麗な花嫁にしてくれるって、彼はそう言ったもの。

「みんなに"綺麗だね"って言ってもらえるような、そんな花嫁さんになりたいです。でも……」
でも。
そこで言葉を止めて、あかねは友雅にしがみついた。
「それ以前に、友雅さんにとっての、綺麗な花嫁さんになりたいんです」
くすぐるように、耳元で聞こえた彼女の声。
肩に触れる頬、身体に絡み付く細い腕。
その背中に手を伸ばすと、柔らかい髪がこぼれて白いうなじが目を射る。

「あかねの言葉は、無駄がないね」
……?
彼女を抱きとめながら、そう言った友雅の言葉にぽかんとする。
「肝心なところで強烈な一言を言う。ピンポイントで、討ち抜かれてしまうよ。」
「よく分からないんですけど、どういう意味ですか?」
「ふふ、分からないか。でもまあ、そんなところが良いんだろうな」
無意識で言っているのなら、かなりの強者だ。
私にとっての綺麗な花嫁になりたい、なんてね。
万人から綺麗と言われるよりも、私から言われたいなんて…。
まったく、そんなことをさらっと言うのだから、益々気持ちが高まってしまうじゃないか。

「…決めてくれますよね?」
「分かった。次がラストチャンス、だね」
君が似合うドレスを、私が選んであげよう。
愛を育む誓いを染み込ませられる、純白のウェディングドレスで君を飾り立てて。
ゴージャスなデザイン、愛らしいキュートなデザイン、これまで彼女が身につけた種類は数知れず。
さて、どんなドレスが彼女に一番似合うだろう?
どれもこれもぴったりだった記憶があって、また迷ってしまいそうだが。
「そうだな…でも、やっぱり一番綺麗に見えるのは…あかねそのものかな」
「はい?私そのもの?」
「そう、君自身。つまり--------------」
びくっとあかねの身体が震えた。
背中に回されていた彼の指先が、いつのまにかブラウスの裾をくぐり抜けていたものだから。
「あかねのどんな姿が、私には一番綺麗に思えるのか、隣の部屋に移動して教えてあげようか?」
「……もう!いつもそっちの方向に持って行くんだから!」
手のひらで両頬を挟んで、ぱちんと軽く音を立てる。
もちろん、跡も痛みも感じない優しさの仕草で。

「大丈夫。あかねの夢は、すべて叶えてあげるから」
一人前の看護師になる夢も、美しい花嫁になる夢も、私が現実にしてみせる。
こうして同じ職場で出会って、恋に落ちたときからきっと運命は決まっていた。
誰にも感じなかった、狂おしい想いも何もかも経て、抱きしめる唯一の幸せの形。
「でも、お披露目は一度だけだよ。そのあとは--------私だけ、ね」
「はぁ…。まったくもう、友雅さんは…」
相変わらずなんだから、と笑う天使は、この腕の中。
彼女から近付けてくる唇は、まるで蝶のようにひらりと、ふわりと、彼の唇の上に舞い降りる。
「これからまた、色々大変そう」
ドレスが決まったら、結婚式も披露宴も本格的な準備開始。
慌ただしいことは、まだまだ山積み。
今度はこれまでと違う意味で、疲れてしまいそうな気もするけれど。
「疲れる暇など、与えないよ?」
そんな余裕がないくらい、幸せな気持ちを君に与えるから。
私が感じた想いと同じくらい、幸福を味わわせてあげるから。
そう、天使の君に相応しく、天にも昇るような-----------

「昇らせないけどね。」
抱きしめたこの天使を、離せるわけがない。




-----THE END-----




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2013.04.16

Megumi,Ka

suga