光り降る音

 第25話(4)
跡形もなく天真たちの存在が消えてしまうと、まるで夢を見ていたかのような気持ちにさえなってきた。

でも、あかねはここにいる。
生まれ育った場所とは全く違う、平安の世に生きている。
すべて現実。これまでのことも、そして…芽生えた想いもここにちゃんと残っている。

「寂しいかい?」
あかねはうなづいた。今は強がることなど無理だった。
いつだってそばにいてくれた彼らの存在が、消えてしまったあとはそこだけが穴が開いてしまったような空虚感が拭えない。
「二度と逢えないという確信はないよ。この世は、どんなことがあるか見当もつかないものだからね。」
友雅が肩を引き寄せて、そう言った。
「全く違う世界で生きている君が、ここにいるのだからね。いつか…また逢える時が来るかも知れないよ」
もしも、そんな日がやって来るのなら。
その時まで、あかねが寂しさを感じないように、ずっとこうしてそばにいてやろう。
例えその日が来ないとしても、彼女が昔を思う余裕さえないほどに、強く抱きしめていれば良い。

そのために、この手がある。彼女のために、自分がいるのだから。


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「さて。これから君は正式にこちらの住人となるわけだけれどね。これからはどうするんだい?」
水辺を彩る睡蓮が、華やかな色に周囲を染めている。座り込んで眺めているあかねの隣で、友雅が髪を掻き上げた。
「どうするって…取り敢えずこのまま、土御門家でしばらくお世話になることになっていますけど……」
これまでの生活が、急に変わることはないだろう。
ただ、龍神の神子という立場に捕らわれていた頃よりは、自由に動くことが出来るに違いない。
「それに、しばらくしたら正式に養女ってことになるかもしれないって、この間藤姫のお父さんとも話してありますから、そんなに心配はないと思うんですけどね」
新しい家族。新しい生活。
本当の家族も愛おしいけれど、短い日々の中で紡いだ絆も愛おしい。


ふう、と大きな溜息を友雅がこぼした。
「そうやって、ずっと土御門で暮らしていくつもりなのかい?もっと良い場所があるというのに」
睡蓮の下で、魚が泳ぐ。水面に描いた輪が広がっていく。
「私の屋敷なら、人も少ないしのんびり出来ると思うんだけれどねえ…」
「……友雅さん……っ」
驚いた顔が、こちらを見上げる。ほのかに染まる頬が、出会った頃の桜を思い出させる。
「土御門のように絢爛ではないけれど、君にとって一番大切なものがあるから問題はないと思うがね」
「…一番大切なもの?」
折っていた膝を伸ばして、腰を上げる。立ち上がったとたん、友雅があかねの顎をくいっと指先で持ち上げた。

「君を護り、そして愛する。そんな唯一の男がいるということだよ」
口づけのあと、そう言って微笑んだ。

--------ふいに飛び込んできたそれは、ずっと夢見ていた、いつでも一緒にいられる未来。



抱きしめる腕の中にもたれて、耳元で彼が囁く。

「離れないって、誓っただろう?」

大切な友達に、大切な仲間に。
そして、愛するあなたに。

二度とその手を離さない。
もう、自分に嘘なんかつかない。何も隠さない。
あなたには、本当の自分を愛してもらいたい。






泣きたいくらいの溢れる想いを胸に、これからもあなたの隣で生きていく。

お互いの命の輝きが消える、その瞬間まで。


そして、ひとつの光に溶ける時を夢みてる。










-----THE END------





(長い間、お付き合い下さいましてありがとうございました!
あとがきがありますので、お時間がありましたら次ページへどうぞ♪)



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Megumi,Kasuga