Everyday Happy Hour

 003
【PM8:30】

ゆっくり時間をかけた夕食であっても、これくらいになれば終わっていることが殆ど。
食器洗いは機械におまかせして、こまごまとした片付けをしたり、明日の用意をしたりする。
たまには子どもたちや友雅も手伝ってくれたりするが、それほど手がいらない時は皆リビングにいる。
宿題や予習も自室には戻らず、大概家族がいるリビングで行っている。
分からないことがあると父や母に尋ねたりするが、困ったことに時代が変わると学ぶことも違っているようで。
「逆に私の方が教えられているよ」
そんな子どもたちをしっかり教えられる鷹通には心底尊敬する。
以前は週一の家庭教師を頼んでいたが、現在は月に二回のペースになった。
博物館の学芸員である彼。ベータベースの管理担当になり、忙しい毎日を送っているらしい。
それでも時間を作って千歳たちの勉強を見にきてくれるのは有り難い。

「終わりましたわ」
文紀と千歳はノートを閉じて、鉛筆を筆箱にしまう。
二人が宿題を終えるまで友雅と絵本を見ながら待っていたまゆきが、ソファから下りて千歳のそばにやって来た。
「さて、今度はみんなで宿題の続きだね」
現在子どもたちはジグソーパズルに挑戦している。
しかも1000ピースといった、小学生にはかなりの大作だ。
三人で協力しながら外堀を何とか完成させ、毎日少しずつ進めている。
大変な作業なので友雅たちも少し手伝いながら、ようやく……20%くらいの完成度。まだまだ先は長い。
パズルの絵柄は沖縄の海の景色だ。あかねの両親がプレゼントに送ってくれたもの。
祖父母がこちらに帰って来たときに見せてあげるのだ、とみんな気合いを入れて頑張っている。
ちなみに、毎日9時半までがタイムリミット。
就寝時間が遅くならないように、ルールを守って毎日作業している。


【PM11:00】

「それではおやすみなさいませ」
子どもたちが10時に就寝し、11時になると祥穂も自室へと上がって行く。
彼女の部屋は二階にあり、子どもたちの部屋の向かいにあるので、お互いに何かあった時に声をかけやすい。
友雅たちにとっても彼女がそばにいてくれるのは、とても心強い。
そういうわけで、一日の終わりが近付いている、
日付が変わるまで1時間を切り---------大人だけの時間から、二人だけの時間に変わる。
二人はどんな風に夜の時間を過ごすのか。


「で、そろそろ夏服を少し買いそろえようかと思って」
あかねは新聞の折り込みチラシを、友雅に見えるようにテーブルに広げる。
週末からセールが始まるようで、夏向けの子ども服もお値打ち価格があるそうだ。
「なら土曜日は買い物だけにして、食料品の買い出しは日曜にしよう。一日ですべて回ろうとしたら疲れてしまうからね」
まとめて行動することも可能ではあるけれど、慌ただしい空気は心身が疲弊する。
せっかく家族で出掛ける時間なのだし、外出を楽しむ余裕を持たねば。
「買い出しだけなら二人でも十分だろう」
子どもたちが家で遊びたいなら、それでも良い。その時は、自分が付き合うからと彼は提案した。

「そういえば、最近二人だけで出かけてないですね」
「…それは、遠回しにデートのお誘いかい?」
「うーん、そう思ってもらっても構いませんけど」
家族で過ごす時間と同じくらい、二人の時間も大切にしているつもり。
別段不満があるわけじゃない。今まで気付かなかったくらいなのだから。
でも、気付いてしまうと気になってくるもの。
「来週はあまり仕事が忙しくなさそうだから、ランチでも一緒に行こうか」
仕事仲間とのビジネスランチより、最愛の人と楽しむ食事の方がずっと美味しく感じられるはず。
業務に真剣に取り組んでいても、時にはそういうリラックスタイムが必要不可欠。
「店を手配しておくから、和洋中なんでも良いよ」
「どうしようかなー。何でも良いって言われるのが一番悩むタネなんですよ」
季節柄、こってりしたものよりさっぱりしたものが良い。
どうせだから、家で作るには手間がかかりそうなものが良いかも。
「和食にします。でも、お手軽なお店で」
「了解。良い店を探しておくよ」
「手頃なお店ですからね、手頃な!」
一応念を押しておかないと、高級料亭を平然と予約しちゃったりする人間だ、彼は。
まあ、そうは言ってもそれなりの店をチョイスするであろう。こればかりは育ちの違いだから仕方ない。

「そろそろ寝ましょうか。寝る前に何か飲みます?」
「梅酒が良いかな、丁度旬だし」
三年前に仕込んだ梅酒は、年数を重ねて味に深みが増してきた。
残りも少なくなってきたので、今年はまた仕込んでみても良いかもしれない。

一日、そして一年がゆっくり、時に足早に過ぎていく。
ありふれたいつもと変わらないルーティンを繰り返しつつ、記憶は積み重なって熟成されていく。




-----THE END-----




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2021.06.12

Megumi,Ka

suga