あっという間に半年が過ぎ、いよいよ梅雨の季節になってきた。
すっきりとした青空が見える日も少なくなり、日常生活も憂鬱になりがちな6月。
「誕生日どうします?」
BGMがわりのテレビを何気なく見ながら、隣に座っているあかねが切り出した。
6月になると必ず彼女はそう尋ねる。
雨が多くても湿気が多くても、6月は特別な月。
大切な人が生まれた月だから。
「平日だしケータリングとかでいいんじゃないかい」
「それでも良いですけど、いつもそんな感じじゃないですか。何か変わり映えしないなぁって気もして」
「店を変えてみるのは?」
このマンションがケータリングサービスを提携している店は多岐に渡る。
カジュアルなファストフードもあれば、有名レストランや料理店も多数揃っていて和洋折衷色々な料理を自宅で楽しむことが出来る。
「普段あまりうちでは作れない料理とか」
「和食?お寿司とか」
「あかねが良いならそれで構わないよ」
「私が良いとかじゃないでしょ、主役は友雅さんなんですよ」
全ての面において共通することだが、彼は自己主張・我を強いることは滅多にない。
仕事の面ではそれなりに意見を言う場合もあるが、私生活では大概他人任せであり適当に場の流れに乗ってやり過ごす。
あかねとの関係も同じで、彼女の意向を最優先する。
自分よりも彼女が満足するならそれで良いと本気で思っているためリクエストに答えさせるのは結構難儀。
「じゃあ決めちゃいますからね。あとで文句を言うのは無しですよ」
「私があかねに文句を言ったことなんてあったかな?」
「まったくもう…そーいう時だけ饒舌なんだから」
「お望みならいくらでも喋るよ。…聞かせてあげようか」
肩を引き寄せられ、耳元に近づいた唇から発せられるのは1人にしか聞こえないくらいの囁きの声。
何度聞いてもドキッとして、心の奥底が震えるような言葉。
「あかねにしか言わないよ」
そんな彼の言葉の虜にされて、今夜も長く甘い時間が始まる。
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