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共鳴音
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001 |
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命は必ずや、何かしら意味を持ってこの世に生まれ出る。
お師匠殿は私に、そう告げた。
しかし、具体的な意味は教えてはくれなかった。
私は何故、この世にいるのか。
何のために、生きているのか。
考えても答えが出てこない日々が流れて行くのを、
私は黙って見つめているしかなかった。
天には月と星が輝き、
降り注ぐ雨の滴は大地を潤す。
命を育み、新しい世界の扉を開き続けて、
常に世界は変化して行く。
そんな理は理解できているのに、
肝心の自分の意味が分からない。
真っ直ぐ前を歩きながらも、私は迷いの森にいる。
見いだせる答えの光は遠く、辿り着いた頃には消えている。
それでも歩き続けなくてはならない。
立ち止まっても答えは見つからない。
探り当てるように手を伸ばして、あらゆるものに目を向けた。
伸ばした手がつかんだ、もう一つの手が暖かかったとき、
私はやっと目を開けた。
そして捕らえたおまえの姿を目の中に焼き付けたとき、
はじめて私は答えを見つけた。
「運命」という言葉の意味が、
私の生まれてきた意味。
おまえと出会う運命が私の生まれた意味だと
そう言ったらきっとおまえは、多分笑うだろう。
それでも、共鳴する鼓動がずっと止まらない。
つながれた手が、お互いの存在を求めていることを
おまえは気付いているだろうか。
願わくばおまえの生まれてきた意味が
私と出会う運命の元にあることを私は信じたい。
-----THE END-----
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